輸血を受ける前の「同意」とは?説明される8つの項目
公開 2026/08/22・更新 2026/09/05
- 輸血は「説明と同意」が必須の医療行為。同意書は一部を患者に渡し、一部を診療録に保管(厚労省の指針)
- 説明される8項目:必要性、製剤の種類と量、リスク、救済制度、自己血輸血、感染症検査と検体保管、記録保管と遡及調査、その他
- リスクをゼロと言い切らず、万一のときの救済制度(PMDAの生物由来製品感染等被害救済制度)まで事前に説明
- 同意は患者の権利。分からないことは質問してよく、断ることもできる。緊急時は事後説明になる場合も
- 献血者の血液は、この丁寧な説明と同意を経て患者さんに届く
輸血は「説明と同意」が必須の医療行為
厚生労働省の「輸血療法の実施に関する指針」は、患者またはその家族が理解できる言葉で輸血療法について十分に説明し、同意を得たうえで同意書を作成することを求めています。同意書は一部を患者に渡し、一部を診療録(カルテ)に残します。輸血は他人の血液という「生物由来製品」を体に入れる医療行為で、薬とは異なるリスクがあるため、手術や検査と同じく事前の説明と同意が原則です。
説明される8つの項目
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 1. 輸血療法の必要性 | なぜ輸血が要るのか。貧血の程度、手術の出血見込み、血小板の減少など |
| 2. 使用する血液製剤の種類と使用量 | 赤血球製剤・血小板製剤・新鮮凍結血漿のどれを、何単位 |
| 3. 輸血に伴うリスク | 副作用(発熱、アレルギー、溶血、TRALI、輸血後GVHDなど)と感染症(ウインドウ期の残存リスク)の可能性 |
| 4. 救済制度 | 医薬品副作用被害救済制度・生物由来製品感染等被害救済制度と、給付の条件 |
| 5. 自己血輸血という選択肢 | 予定手術では自分の血液を貯めて使う方法がある(自己血輸血とは) |
| 6. 感染症検査と検体保管 | 輸血前後の感染症検査と、献血血液の検体が11年間保管される仕組み(検体保管) |
| 7. 投与記録の保管と遡及調査への使用 | 誰にどの製剤を輸血したかの記録を保管し、問題があれば追跡に使う(遡及調査) |
| 8. その他、輸血療法の注意点 | 輸血中の観察、副作用が出たときの対応、輸血後の検査など |
「リスクも救済も先に話す」のが現代の輸血
今の輸血は何重もの検査と安全対策で守られていますが、リスクをゼロと言い切らず、万一のときの救済制度まで含めて事前に説明する設計になっています。輸血によって感染症にかかった場合は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の生物由来製品感染等被害救済制度により、医療費や障害年金などの給付を受けられる可能性があります。副作用については医薬品副作用被害救済制度が対応します。分からないことは遠慮なく質問してかまいません。同意は患者の権利であり、納得してから受けるものです(献血血液の安全を守る仕組み・NAT検査とウインドウ期)。
輸血の副作用の実際
説明される「リスク」の中身を知っておくと、説明が理解しやすくなります。
- 発熱・アレルギー反応(じんましん):最も多い副作用。保存前白血球除去で減少。多くは軽症で、輸血を止めて対処すれば回復。
- 溶血性副作用:血液型の不適合で起こる重い反応。ABO・不規則抗体の検査とクロスマッチで防ぐ(輸血前の適合試験)。
- TRALI(輸血関連急性肺障害)・TACO(循環過負荷):まれだが重い。輸血中の観察で早期対応。
- 輸血後GVHD:放射線照射により1998年以降確定症例ゼロ(放射線照射)。
- 感染症:NAT検査などで極めてまれになったが、ウインドウ期のリスクはゼロにならない。
緊急時・断る場合・家族が説明を受けるとき
同意書に書かれていること
同意書には、説明を受けた項目のチェック、患者・家族の署名、説明した医師の署名、日付が記載されます。「輸血に同意する」だけでなく、「自己血輸血の説明を受けた」「検体保管と遡及調査に記録が使われることを理解した」といった項目が含まれるのが一般的です。控えは手元に保管しておくと、後日の副作用や救済制度の申請で役立ちます。
献血者にも知ってほしい理由
あなたの献血血液は、こうした丁寧な説明と同意のプロセスを経て患者さんに届きます。献血者側の問診、血液センターの検査・製剤化・検体保管、医療機関での適合試験・説明・同意・記録——血液のバトンの最後の受け渡しまで誠実に設計されている。それが、献血という善意が信頼される理由です。また、輸血を受けた方はその後献血できませんが(未知の感染症を排除する念のための措置)、家族や周囲に献血をすすめることで血液事業に関わり続けられます(輸血歴と献血・献血された血液はどう使われる?)。
よくある質問
Q. 輸血の前にはどんな説明を受けますか?
A. 国の指針により、輸血の必要性、製剤の種類と量、リスク、救済制度、自己血輸血の選択肢、感染症検査と検体保管、記録の保管と遡及調査、その他の注意点の8項目を、理解できる言葉で説明されることになっています。
Q. 輸血の同意書は必ず必要ですか?
A. 指針では、説明のうえ同意を得て同意書を作成し、一部を患者に渡し一部を診療録に添付することとされています。緊急時は救命を優先し事後に手続きを行うことがあります。
Q. 輸血を断ることはできますか?
A. できます。同意は患者の権利です。医療機関は輸血を受けないリスクと、自己血輸血や代替治療の選択肢を説明します。
Q. 輸血で感染症にかかったら補償はありますか?
A. PMDAの生物由来製品感染等被害救済制度により、医療費や障害年金などの給付を受けられる可能性があります。この制度も事前に説明される項目のひとつです。
Q. 輸血の副作用で多いのは何ですか?
A. 発熱やじんましんなどのアレルギー反応が最も多く、多くは軽症です。溶血、TRALI、感染症などの重い副作用はまれで、検査や安全対策で防いでいます。
Q. 家族が輸血を受けます。何を聞けばいいですか?
A. なぜ必要か、何をどのくらい輸血するか、リスクと副作用が出たときの対応、自己血輸血が可能か、救済制度の内容を聞いてください。分からないことは遠慮なく質問してかまいません。
次にすること
関連ガイド
- 自己血輸血とは?手術前に自分の血を貯める仕組み(貯血式・希釈式・回収式)・向いている手術・献血との違い・献血ルールへの影響
- 献血後に問題が分かったら?遡及調査(ルックバック)と貯留保管のセーフティネット・献血後情報の申告方法・多層防御の全体像
- 献血血液の検体は11年間保管される|全国3か所の貯留保管棟・何のために・遡及調査との関係・献血者にお願いしたいこと
- 献血された血液はどう使われる?輸血の用途・がん治療が最多・血液製剤の種類・有効期間・献血から患者さんに届くまで
- 血液型が同じでも輸血前に検査する理由|不規則抗体とクロスマッチ・ABO以外の血液型・緊急輸血のO型・献血者にとっての意味
- 血液製剤に放射線を当てる理由|輸血後GVHDとは・15〜50Gyの照射・1998年以降確定症例ゼロ・照射した血液は安全か
- 輸血を受けた人はなぜ献血できない?期限なしルールの理由・自己血輸血・臓器移植・血漿分画製剤との違い
- 献血で病気がうつることはない|針・バッグは全部使い捨て・成分献血の体外循環も安全・「もらう側」を守る多層防御