NAT検査とは?献血血液のウイルスを1億倍に増やして見つける技術

公開 2026/08/22・更新 2026/09/05

献血された血液は、どうやって「安全」を確かめているのか。その中核にあるのがNAT(核酸増幅検査)です。ウイルスの遺伝子(核酸)の一部を約1億倍に増やして検出するため、抗体ができる前の感染初期でもウイルスを見つけられます。日本では1999年に導入され、2014年からは献血1本ごとの個別NATに。それでも日本赤十字社は「ウインドウピリオドがゼロになることはありません」と明記しています。だから問診への正直な回答が不可欠なのです。
⚡ 30秒でわかる要点
輸血の安全を守る多層防御1問診ウインドウ期対策の最初の砦2初流血除去最初の約25mLを輸血用から外す3検査(NAT等)ウイルス遺伝子を約1億倍に増幅して検出4貯留保管血漿は6か月以上寝かせてから供給5検体11年保管後から再検査できるよう全数保管6遡及調査万一の際は追跡・回収・患者フォロー
前の網をすり抜けても次の網で捕まえる多層設計。各工程の詳細は本文とリンク先の記事で解説しています。
📑 目次
  1. NATとは
  2. 対象は4つのウイルス・全血液を「1人分ずつ」検査
  3. 血清学検査との二段構え
  4. それでも「ウインドウ期はゼロにならない」
  5. 検査に落ちた血液はどうなる?
  6. NATの導入で何が変わったか
  7. 献血者にとってのNAT
  8. よくある質問

NATとは

NAT(Nucleic acid Amplification Test、核酸増幅検査)は、ウイルスの遺伝子を構成する核酸(DNAまたはRNA)の一部を約1億倍に増幅して検出する検査です。従来の血清学検査は、ウイルスに対して体が作る抗体や、ウイルスの表面の抗原を検出しますが、抗体ができるまでには感染から数週間かかります。NATはウイルスそのものの遺伝子を直接増やして見つけるため、抗体ができる前の感染初期でもウイルスを捉えられ、検出できない期間(ウインドウ期)を大幅に短縮しました。

対象は4つのウイルス・全血液を「1人分ずつ」検査

日本赤十字社「NAT」の情報より
時期内容
1999年10月HBV・HCV・HIVを対象に、複数の検体をまとめて調べるプール方式(500検体プール)でNATを世界に先駆けて導入
2000年2月50検体プールへ縮小し感度を向上
2004年8月20検体プールへ
2014年8月1検体ごとの「個別NAT」へ移行。プール方式より感度がさらに向上
2020年8月E型肝炎ウイルス(HEV)の個別NATを全国で導入

現在、献血血液はHBV・HCV・HIV・HEVの4種について1本ずつ個別にNATで検査されています。あなたの献血1本1本が、個別に検査されているということです(導入経緯は日本赤十字社「NAT」のページ、2026年9月確認)。

血清学検査との二段構え

NATだけでなく、従来の血清学検査も並行して行われます。HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体、HCV抗体、HIV抗原・抗体、HTLV-1抗体、梅毒抗体などです。NATが得意なのは感染初期のウイルス検出、血清学検査が得意なのは過去の感染や慢性感染の検出で、両方を組み合わせることで見逃しを減らしています。さらにALTなどの生化学検査も行われ、肝機能の異常がある血液は輸血に使われません(献血でわかる検査15項目)。

それでも「ウインドウ期はゼロにならない」

ここが大切なポイントです。日本赤十字社は公式に「ウインドウピリオドがゼロになることはありません」と明記しています。感染のごく初期には、1億倍に増幅しても検出できないほどウイルスが少ない時期があるのです。ウイルスの種類によって数日から数週間、個別NATでも検出できない期間があり、この期間に献血された血液が輸血されると感染を起こす可能性が理論上残ります。だからこそ、検査だけに頼らず問診への正直な回答が不可欠で、検査目的の献血が固く断られています。厚生労働省の問診票解説も、NATでも検出できない時期があるため該当する場合は献血を控えてもらう必要があると説明しています(問診で性的なことを聞かれる理由・検査目的の献血がダメな理由)。

検査に落ちた血液はどうなる?

NATの導入で何が変わったか

NAT導入前、日本では年間数件の輸血によるHBV・HCV感染が報告されていました。個別NATへの移行後、輸血によるHIV感染の報告はなく、HBV・HCVの輸血感染もごくまれになりました。E型肝炎は、北海道で輸血感染例が報告されたことを受けて北海道で先行導入され、2020年に全国に広がりました。検査技術の進歩と問診、多層の安全対策の積み重ねが、日本の輸血の安全性を世界的にも高い水準にしています(献血血液の安全を守る仕組み)。

献血者にとってのNAT

NATは献血者の手間を増やしません。採血した血液の検査用検体で行われ、結果は献血者の知らないところで判定されます。献血者にできることは、問診に正直に答えること、感染の心当たりがあるときは献血を控えること、献血後に心当たりに気づいたら血液センターに連絡することです。1億倍の増幅技術も、献血者の申告があって初めて完全な安全網になります(血液センターへの連絡)。

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よくある質問

Q. NAT検査とは何ですか?
A. ウイルス遺伝子の核酸を約1億倍に増幅して検出する高感度検査です。献血血液はHBV・HCV・HIV・HEVの4種について1人分ずつ個別に検査されています。

Q. NAT検査があれば輸血は100%安全ですか?
A. いいえ。感染ごく初期の「ウインドウ期」はNATでも検出できないと公式に明記されています。だからこそ問診への正直な回答が重要です。

Q. 個別NATはいつから行われていますか?
A. 2014年8月から1検体ごとの個別NATに移行しました。1999年10月の導入当初は複数の検体をまとめて調べるプール方式でした。E型肝炎の個別NATは2020年8月からです。

Q. NATで陽性になったら献血者に連絡が来ますか?
A. B型・C型・E型肝炎、梅毒、HTLV-1は通知を希望した方に限り、異常が認められた場合のみ親展郵便で通知されます。HIVの結果は通知されません。

Q. NATと抗体検査はどう違いますか?
A. 抗体検査は体が作る抗体を検出するため感染から数週間かかりますが、NATはウイルスの遺伝子を直接増やして検出するため、感染初期でも見つけられます。両方を組み合わせて検査しています。

Q. 検査目的で献血してはいけないのはなぜですか?
A. ウインドウ期の血液は検査をすり抜けて輸血に使われる可能性があり、患者さんに感染させる恐れがあるためです。HIV検査は保健所で無料・匿名で受けられます。

📚 この記事の主な根拠(内容確認日 2026/08/22)
※本記事は日本赤十字社・厚生労働省などの公開情報にもとづいています(ページ生成 10/19)。採血基準や延期期間は改定されることがあり、献血の最終的な可否は当日の会場で健診医が判断します。最新情報は日本赤十字社・ラブラッドでご確認ください。

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