輸血用の血液に「放射線」を当てるのはなぜ?
公開 2026/08/22
輸血後GVHDという致死的な副作用があった
輸血後GVHD(移植片対宿主病)は、血液製剤の中に残った献血者のリンパ球(白血球の一種)が、患者さんの体内で生着・増殖し、患者さんの体の組織を攻撃してしまう病態です。日本赤十字社によると、発症するとほとんどの症例で輸血から1か月以内に致死的な経過をたどる、極めて重い副作用でした。
対策=放射線でリンパ球だけを無力化する
そこで日本赤十字社は、血液製剤専用のX線照射装置を用いて15Gy以上50Gyを超えない範囲で放射線を照射し、原因となるリンパ球を不活化しています。赤血球や血小板の機能への影響を抑えながら、増殖能力を持つリンパ球だけを働けなくする、精密にチューニングされた照射です。照射された血液が患者さんの体で放射線を出すことはありません。
結果:1998年以降、確定症例ゼロ
放射線照射済みの輸血用血液製剤は1998年(平成10年)6月19日から医療機関へ供給されており、日本赤十字社は「現在日本ではGVHDの確定症例の報告はありません」と公表しています。かつて確実に人の命を奪っていた副作用が、対策によって四半世紀にわたり抑え込まれている——輸血医療の安全対策の代表的な成功例です。
安全対策は積み重ねでできている
放射線照射のほかにも、保存前白血球除去・NAT検査・初流血除去など、目的の異なる対策が幾重にも重なって輸血の安全を支えています。
よくある質問
Q. 輸血後GVHDとはどんな副作用ですか?
A. 血液製剤中の献血者のリンパ球が患者さんの体内で増殖し、体の組織を攻撃する病態です。発症するとほとんどの症例で輸血後1か月以内に致死的経過をたどるとされていました。
Q. 放射線を当てた血液を輸血しても大丈夫ですか?
A. 大丈夫です。15Gy以上50Gy以下の照射はリンパ球を不活化するためのもので、照射済み製剤の供給が始まった1998年以降、日本では輸血後GVHDの確定症例は報告されていません。
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