CJD(クロイツフェルト・ヤコブ病)と献血|5つの該当条件と背景
公開 2026/08/22・更新 2026/10/10
- 献血できない5条件:CJD・類縁疾患の診断/血縁者の診断/ヒト由来成長ホルモン注射/角膜移植/硬膜移植を伴う脳神経外科手術
- いずれも期間の定めがない恒久的な制限
- プリオンには適切な検査法がなく、問診のみが唯一のスクリーニング法(厚労省の問診票解説)
- 硬膜移植の条件は、ヒト乾燥硬膜「ライオデュラ」による薬害が背景。角膜移植・成長ホルモンも同様の医原性感染の事例から
- 別項目だった変異型CJD(vCJD)対策の英国を含む欧州などの滞在歴による制限は2026年10月1日に撤廃。欧州に住んでいた人も献血できるようになった(帰国後4週間などの他の条件は残る)
- プラセンタ注射(ラエンネック・メルスモン)も2026年10月1日から「最終使用日から3か月間は献血を控え、3か月経過後は献血可能」に変更(それまでは期間を定めず献血をご遠慮)
CJDとは
クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)は、異常な構造をもつプリオンというたんぱく質が脳に蓄積し、急速に進行する認知症や運動障害を起こす、きわめてまれな病気です。原因不明で起こる孤発性、遺伝子の変異による家族性、医療行為を介して感染した医原性、そして牛海綿状脳症(BSE)との関連が指摘される変異型(vCJD)があります。輸血での伝播が疑われる報告があり、リスクを完全に排除できないため、日本赤十字社は該当する方の献血をご遠慮いただいています。
献血できない5つの条件(公式)
| 条件 | 背景 |
|---|---|
| CJDまたは類縁疾患(ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病など)と診断された | 本人が発症している場合 |
| 血縁者にCJDまたは類縁疾患と診断された人がいる | 家族性(遺伝性)CJDの可能性 |
| ヒト由来成長ホルモンの注射を受けた | 過去にヒトの脳下垂体から作られた成長ホルモン製剤を介した感染事例があった |
| 角膜移植を受けた | 角膜移植を介した感染事例の報告 |
| 硬膜移植を伴う脳神経外科手術を受けた | ヒト乾燥硬膜「ライオデュラ」を介した薬害 |
これらは期間の定めがない、恒久的なご遠慮です。「何年たてば献血できる」という基準はありません。
なぜ「問診だけ」がこんなに重いのか
厚生労働省の問診票解説は「プリオンの適切な検査法のない現在、問診のみが唯一のスクリーニング法です」と明記しています。HIVや肝炎ウイルスなら献血血液に高感度のNAT検査を行って捕まえられますが、プリオンは通常のたんぱく質と同じアミノ酸配列をもち、構造だけが異なるため、献血血液から検出する実用的な検査がありません。潜伏期間も数年から数十年と長く、症状が出るまで本人にもわかりません。だからこそ、該当する方の正直な申告が患者さんを守る唯一の砦なのです(NAT検査でわかること・わからないこと・問診で正直に答える理由)。
背景:ライオデュラ事件
「硬膜移植」が条件に入っているのは、かつて脳外科手術で硬膜の補填に使われたヒト乾燥硬膜「ライオデュラ」(ドイツ製)を介してCJDに感染する薬害が起きたためです。日本では1980年代を中心に多数の患者が発生し、国などを被告とする損害賠償訴訟は2002年3月に和解が成立しました。この経験から、硬膜移植を伴う脳神経外科手術を受けた方は、時期を問わず献血をご遠慮いただく扱いになっています。自分が手術で何を使われたかわからない場合は、「硬膜移植を伴う脳神経外科手術を受けたことがあるか」を手術を受けた医療機関に確認するか、問診で手術の内容と時期を伝えて健診医の判断を仰いでください。
変異型CJD(vCJD)と欧州滞在歴(2026年10月1日に撤廃)
1990年代に英国で牛海綿状脳症(BSE)との関連が指摘された変異型CJDは、輸血で伝播した可能性のある事例が英国で報告されています。このため日本では、英国をはじめ欧州諸国に一定期間滞在した方の献血が制限されてきました(2026年9月30日までは、国と時期により1か月〜5年以上の滞在で対象)。英国の基準は1999年に「6か月以上」で始まり、2005年に「1日以上」へ強化、2010年に「1か月以上」へ緩和されています。
2026年1月14日の薬事審議会血液事業部会安全技術調査会で撤廃が適当との方針が示され、日本赤十字社は2026年9月14日のプレスリリースで、英国を含む欧州などの滞在歴に基づく献血制限を2026年10月1日から撤廃すると発表しました。海外からの帰国日(入国日)当日から4週間以内の制限など他の基準は引き続き適用され、上記の5条件による制限も変わりません(海外渡航・欧州滞在歴と献血)。
プラセンタ注射の制限との関係
ヒト由来プラセンタ注射(ラエンネック・メルスモン)を受けた方の献血制限も、原料がヒトの胎盤であるため理論上のvCJDリスクが否定できないことが理由です。2026年9月30日までは使用歴があれば期間を定めず献血をご遠慮いただいていましたが、2026年10月1日から「最終使用日から3か月間は献血を控え、3か月経過後は献血可能」に変わりました(日本赤十字社 2026年9月14日発表)(プラセンタ注射と献血)。
該当しそうで迷う場合
この項目が守っているもの
CJDに関する5つの条件に該当する人はごく少数です。それでも問診票に必ず含まれているのは、検査で見つけられない感染症を輸血から遠ざける最後の手段が申告だからです。該当する方が献血できないのは、その方を疑っているのではなく、検査技術の限界に対する安全マージンです。輸血歴のある方が献血できないのと同じ考え方です(輸血歴と献血・献血血液の安全を守る仕組み)。
よくある質問
Q. 角膜移植を受けたことがあると献血できませんか?
A. できません。CJD関連の5条件(診断歴・血縁者の診断歴・ヒト由来成長ホルモン注射歴・角膜移植歴・硬膜移植を伴う脳神経外科手術歴)のいずれかに該当する方は献血をご遠慮いただいています。
Q. なぜCJDだけ検査ではなく問診で確認するのですか?
A. プリオンには適切な検査法がなく、問診が唯一のスクリーニング法だと厚生労働省の問診票解説に明記されています。
Q. 何年たてば献血できますか?
A. 期間の定めはなく、恒久的な制限です。
Q. 祖父母が認知症でした。該当しますか?
A. 条件は「CJDまたは類縁疾患と診断された血縁者」です。一般の認知症は該当しません。診断名がわかれば問診で伝えてください。
Q. レーシックや白内障の手術は角膜移植に当たりますか?
A. 当たりません。条件は他人の角膜を移植する「角膜移植」で、レーシックや白内障手術は該当しません。
Q. 欧州に住んでいた場合の制限はCJDと同じですか?
A. 別の項目です。変異型CJD対策として英国を含む欧州などの滞在歴による制限がありましたが、2026年10月1日に撤廃されました。欧州に住んでいた方も、帰国後4週間などの他の条件を満たせば献血できます。CJD関連の5条件の制限は撤廃後も続きます。
- 日本赤十字社「クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の方、またはそれと疑われる方」
- 厚生労働省「問診票についての解説」(PDF)(確認 2026/10/11)
- 日本赤十字社 プレスリリース「英国を含む欧州などの滞在歴に基づく献血制限の撤廃およびヒト胎盤エキス(プラセンタ)注射剤使用歴に関する献血基準を変更します」(2026年9月14日)(確認 2026/10/10)
- 日本赤十字社「欧州等滞在歴に係る献血制限の見直しについて」(確認 2026/10/10)
次にすること
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