輸血を受けた人はなぜ献血できない?期限なしルールの理由
公開 2026/08/22・更新 2026/09/05
- 輸血歴・臓器移植歴のある方は献血不可。期間の定めなし(日本赤十字社「輸血歴・臓器移植歴のある方」)
- 理由:現在の検査法では検出できない未知のウイルス感染の可能性を排除するため(念のための措置)
- 自己血輸血(自分の血液を貯めて手術で使う)は対象外
- アルブミン・免疫グロブリンなどの血漿分画製剤は「輸血」ではなく3か月の延期
- 献血はできなくても、家族への呼びかけ・付き添い・体験を伝えることで血液事業を支えられる
公式ルール:輸血歴・臓器移植歴のある方は献血できない
日本赤十字社の公式Q&Aは、「輸血や臓器移植を受けたことのある方は、現在の検査法では検出できない未知のウイルス感染の可能性が考えられるため、献血をご遠慮いただいています」としています。「献血をご遠慮いただく場合」の一覧にも「輸血歴・臓器移植歴のある方」が独立した項目として挙げられています。期間の定めはなく、事実上ずっと対象です。
「あなたが感染している」という意味ではない
厚生労働省の問診票解説は、輸血の安全性は相当程度改善したものの「未知のウイルスを排除することはできません。このような技術の限界を踏まえ、念のため、献血を御遠慮いただいているものです」と説明しています。つまりこのルールは、輸血経験者を疑うものではなく、検査技術の限界に対する「念のため」の安全マージンです。
背景には歴史があります。かつて輸血を介してC型肝炎ウイルスやHIVが広がった時代があり、それらは当時「未知」でした。現在はNAT検査で高感度に検出できますが、将来発見される病原体が今の血液に含まれていない保証はありません。変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)のように、輸血で伝播した可能性が英国で報告された病気もあります。輸血を受けた人がさらに献血して次の人に輸血されると、未知の病原体が連鎖する経路になりうるため、この連鎖を断つ設計になっています(NAT検査でわかること・わからないこと・CJDと献血)。
何が「輸血」に当たるのか
| 受けた治療 | 扱い |
|---|---|
| 赤血球製剤、血小板製剤、新鮮凍結血漿、全血の輸血 | 輸血歴として献血不可(期限なし) |
| 自己血輸血(手術前に自分の血液を貯めて使う) | 他人の血液を受けていないため対象外。献血できる(自己血輸血とは) |
| 臓器移植(腎臓、肝臓、心臓など) | 臓器移植歴として献血不可 |
| 骨髄移植・末梢血幹細胞移植・さい帯血移植を受けた | 他人の造血幹細胞を受けており、輸血も伴うことがほとんど。献血不可 |
| 角膜移植、硬膜移植 | CJD関連の条件として献血不可 |
| アルブミン、免疫グロブリン、フィブリノーゲン、トロンビンなどの血漿分画製剤 | 「輸血」ではなく、血液センターの基準で3か月延期。抗HBsヒト免疫グロブリンは6か月 |
| 血液凝固因子製剤(血友病の治療) | 血友病は血液疾患として献血不可 |
| 出産時に輸血を受けた | 輸血歴として献血不可 |
| 新生児期・乳児期に輸血を受けた(本人は記憶にない) | 輸血歴に当たる。母子手帳や家族に確認を |
「輸血を受けたかどうかわからない」場合は、手術を受けた医療機関や家族に確認してください。大きな手術や出産で出血が多かった場合、本人が知らないうちに輸血されていることがあります(献血からできる血液製剤の種類)。
ケース別
献血以外の「恩返し」もある
献血はできなくても、血液事業を支える方法はあります。
- 家族・友人に献血をすすめる:輸血を受けた本人の言葉は、どんな広告より強い「献血の理由」になります。
- 付き添いで一緒に行く:初めての人は同行者がいると安心です(付き添いでの献血)。
- 体験を伝える:SNSや職場、学校で「輸血に助けられた」と話すこと自体が献血推進です。日本赤十字社には患者・家族の声を届ける取り組みもあります。
- 献血推進のボランティア・寄付:各都道府県の献血推進協議会やライオンズクラブなどの活動、日本赤十字社への寄付。
- 骨髄バンクのドナー登録は?:輸血歴のある方は骨髄バンクのドナー登録もできない基準になっています。ここでも「未知の感染症」の考え方が共通しています(骨髄バンクと献血)。
問診での伝え方
問診票には輸血歴・臓器移植歴を尋ねる項目があります。「いつ、何の治療で、何を受けたか」を伝えてください。自己血輸血や血漿分画製剤の場合は、その旨を伝えれば健診医が区別して判断します。輸血を受けたことは隠すことではありません。あなたの命が誰かの献血に支えられたという事実は、献血の必要性そのものを示しています(献血できる条件の一覧・問診で聞かれること)。
よくある質問
Q. 昔輸血を受けましたが、献血できますか?
A. できません。現在の検査で検出できない未知のウイルス感染の可能性を排除するため、輸血歴のある方は期間の定めなく献血をご遠慮いただいています。
Q. それは私が何かに感染しているという意味ですか?
A. 違います。検査技術の限界を踏まえた「念のため」の安全対策であり、輸血経験者を疑うものではありません(厚生労働省の問診票解説より)。
Q. 自分の血を貯めて手術で使った場合(自己血輸血)は?
A. 自己血輸血は他人の血液を受けていないため、この制限の対象外です。手術の種類による延期期間は別に適用されます。
Q. アルブミンやガンマグロブリンの点滴は輸血ですか?
A. 輸血ではなく血漿分画製剤として、血液センターの基準では3か月の延期です。抗HBsヒト免疫グロブリンは6か月です。
Q. 輸血を受けたかどうかわかりません。
A. 手術を受けた医療機関や家族に確認してください。大きな手術や出産で出血が多かった場合、本人が知らないうちに輸血されていることがあります。
Q. 献血できない代わりにできることはありますか?
A. 家族や友人に献血をすすめる、付き添う、輸血に助けられた体験を伝える、献血推進のボランティアや寄付に参加する、といった方法があります。
- 日本赤十字社「輸血歴・臓器移植歴のある方」
- 厚生労働省「問診票についての解説」(PDF)(確認 2026/10/11)
次にすること
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