献血の問診で性的なことを聞かれる理由|プライバシーは守られる?
公開 2026/08/22・更新 2026/09/05
- 質問20(2024年版):6か月以内の①不特定・新たな異性との性的接触、②男性どうしの性的接触、③麻薬・覚せい剤の使用、④HIV検査陽性(6か月以前も含む)、⑤①〜④の該当者との性的接触
- 理由:NAT検査でも感染ごく初期は検出できないウインドウ期があり、問診が最後の砦(厚労省の問診票解説)
- 夫婦・決まったパートナーとの関係は「不特定・新た」に当たらない
- 回答はタッチパネルや仕切りのある席で。口頭で読み上げられない。目的外利用・第三者提供はしない(同意説明書)
- 問診票に勤務先の欄はない。記入した問診票は法令により返却・廃棄できず、安全のために保全される
実際に聞かれること(現行問診票・質問20)
2024年版の問診票では、「6ヵ月以内に次のいずれかに該当することがありましたか」として、次の5項目が問われます。
- 不特定の異性または新たな異性との性的接触
- 男性どうしの性的接触
- 麻薬・覚せい剤の使用
- HIV検査の結果が陽性(6ヵ月以前も含む)
- ①〜④に該当する人との性的接触
特定の属性を排除するためではなく、「6か月以内に新しいリスクがあったか」を全員に等しく尋ねる設計です。性別・年齢・婚姻状況にかかわらず、すべての献血者が同じ質問に答えます。
なぜ聞くのか:検査には「見えない時期」があるから
献血血液はHIV、B型・C型肝炎などについて、ウイルスの核酸を約1億倍に増幅して検出するNAT検査を受けます。それでも厚生労働省の問診票解説によると、感染のごく初期には、強い感染力を持つにもかかわらず最も鋭敏な検査法でも検出できない時期(ウインドウ期)が存在します。日本赤十字社も「ウインドウピリオドがゼロになることはありません」と公式に明記しています。この時期の血液が輸血に使われると患者さんに感染させてしまうため、該当する場合は献血を控えてもらう必要があります。輸血を受ける患者さんを守る最後の砦が、この問診への正直な回答です(NAT検査でわかること・わからないこと・検査目的の献血がダメな理由)。
「該当する」「しない」の境界
| 状況 | 該当 |
|---|---|
| 夫婦、決まった恋人との性的接触 | 該当しない(「不特定」でも「新た」でもない) |
| 6か月以内に新しいパートナーができた | 「新たな異性との性的接触」に該当。6か月経過後に献血できる |
| 7か月前に新しいパートナーができ、その後は同じ相手 | 6か月を過ぎているため該当しない |
| 6か月以内の男性どうしの性的接触 | 該当。6か月経過後に献血できる |
| パートナーが①〜④に該当する | ⑤に該当 |
| HIV検査で陽性になったことがある | 期間にかかわらず該当し、献血できない |
判断に迷う場合は、問診の場で健診医に相談できます。「はい」と答えた場合、その日は献血を見送り、6か月経過後にあらためて協力できます。恥ずかしいことではなく、それが仕組みの通常運転です。
プライバシーはどう守られるか
- 日本赤十字社は「問診内容のプライバシーは厳重に保護されますので、正確にお答えください」と公式に明記しています。
- 個人情報は目的外利用・第三者提供をしない(法令の定めや本人同意がある場合を除く)ことが同意説明書に記載されています。
- 問診はタッチパネルや個室・仕切りのある席で行われ、口頭で読み上げられることはありません。健診医との問診も周囲に聞こえない配慮がされています。
- ラブラッドなら来場前にスマホで回答でき、その場で書く気まずさも減らせます。
- 同行者や家族に回答が伝わることはありません。
知っておきたい2つのこと
- 勤務先を書く欄は問診票にはありません(本人確認・連絡先などの登録情報とは別です)。職業を聞かれるのは、献血後に高所作業や運転を予定しているかという安全確認の文脈だけです。
- 法令の規定により、記入した問診票・献血申込書の返却・廃棄はできません。これは記録を改ざんせず保全するための決まりで、輸血後に問題が起きたときの遡及調査など安全のために使われます(遡及調査の仕組み)。
正直に「はい」と答えたら何が起こるか
その日の献血は見送りになり、「いつから献血できるか」を案内されます。理由が記録に残ることはあっても、外部に知らされることはなく、次回以降の献血に不利益はありません。逆に、事実と異なる回答をして献血すると、ウインドウ期の血液が輸血に使われ、患者さんに感染させる可能性があります。日本赤十字社は「事実と異なる回答をされた場合、輸血を受けた患者さんに深刻な状況をもたらす場合があります」と明記しています。正直に答えて当日ご遠慮になっても、それは恥ずかしいことではありません。うそをついて献血するほうが、患者さんを危険にさらします。
この質問をめぐる議論
「男性どうしの性的接触」を項目に含めることについては、特定の属性への差別ではないかという議論が国内外にあります。海外では、個人のリスク行動に基づく質問(相手の人数や新しい相手の有無など)に切り替え、性別や性的指向を問わない方式に移行した国もあります。日本の現行問診票も「6か月以内」という期間で区切り、恒久的な排除ではなく期間限定の見送りとしています。基準は疫学データにもとづいて見直されるもので、この記事は2024年版問診票の内容にもとづいています。最新の問診票は日本赤十字社の公式ページで確認してください(問診で聞かれることの全体像)。
献血後に心当たりを思い出したら
献血のあとで「あの回答は違っていた」「感染の心当たりがある」と気づいたときは、献血した血液センターに連絡してください。申告された血液は製造工程から除かれる仕組み(献血後情報)があり、連絡したことで責められることはありません。あなたの一報が患者さんを守ります(血液センターへの連絡)。
よくある質問
Q. 問診で性的な質問をされるのはなぜですか?
A. NAT検査でも感染ごく初期は検出できない「ウインドウ期」があるためです。6か月以内の新しいリスクの有無を全員に等しく尋ね、輸血を受ける患者さんを守っています。
Q. 夫婦・決まった恋人との性的接触も該当しますか?
A. 問診が尋ねるのは「不特定の異性または新たな異性との性的接触」等です。固定したパートナーとの関係はこれに当たりません。
Q. 問診の回答が外部に漏れることはありませんか?
A. 日本赤十字社は問診内容のプライバシーを厳重に保護すると公式に明記しており、法令の定めや本人同意がある場合を除き目的外利用・第三者提供はしないとされています。同行者に伝わることもありません。
Q. 「はい」と答えたらどうなりますか?
A. その日の献血は見送りになり、いつから献血できるかを案内されます。外部に知らされることはなく、次回以降の献血に不利益はありません。
Q. 問診票に勤務先を書く必要はありますか?
A. ありません。問診票に勤務先の欄はなく、職業を聞かれるのは献血後の高所作業や運転の予定を確認する安全上の文脈だけです。
Q. 問診票を返してもらえますか?
A. 法令の規定により返却・廃棄はできません。記録を保全し、輸血後の遡及調査など安全のために使われます。
- 日本赤十字社 問診票(2024年版PDF)
- 厚生労働省「問診票についての解説」(PDF)(確認 2026/10/11)
- 日本赤十字社「献血の手順」(確認 2026/09/05)
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