血液製剤の「LR」とは?保存前白血球除去が行われる理由
公開 2026/08/22・更新 2026/09/05
- LR=Leukocytes Reduced(白血球除去済み)。日本の輸血用血液製剤はすべて保存前白血球除去が標準
- 目的:白血球に起因する発熱反応や感染症等の副作用を減らす(日本赤十字社)
- 防げるもの:非溶血性発熱反応、HLA抗体の産生(血小板輸血不応の原因)、白血球に潜むウイルスの感染リスク低減
- 導入:2004年10月に成分献血由来の血小板製剤、2007年1月16日採血分から全血献血由来の製剤にも拡大
- 放射線照射との違い:白血球除去は「数を減らす」、照射は残ったリンパ球の「働きを止める」。両方行う
LR=Leukocytes Reduced(白血球除去済み)
日本の輸血用血液製剤の名前に付く「LR」は、英語のLeukocytes Reduced(白血球を除去した)の頭文字です。例:濃厚血小板-LR「日赤」=Platelet Concentrate, Leukocytes Reduced, NISSEKI。製剤を保存する前の段階で白血球を取り除いてあることを示しています。赤血球液-LR、濃厚血小板-LR、新鮮凍結血漿-LRと、輸血用血液製剤の主要なものにはすべてこの表示があります。
なぜ白血球を除くのか
輸血で届けたい主役は赤血球・血小板・血漿であって、白血球ではありません。それどころか、混ざった白血球は副作用の原因になります。日本赤十字社は「保存前に白血球を除去し、白血球に起因する発熱反応や感染症等の副作用を減少させることを目的としています」と説明しています。
| 白血球が原因になる問題 | 白血球除去の効果 |
|---|---|
| 非溶血性発熱反応 | 白血球が放出するサイトカインや、患者さんの抗体と白血球の反応で起こる発熱・悪寒を減らす |
| HLA抗体の産生 | 白血球のHLA型に対する抗体が患者さんにできると、その後の血小板輸血が効かなくなる(血小板輸血不応)。白血球を減らすことで抗体産生を抑える |
| 白血球に潜むウイルス | サイトメガロウイルス(CMV)など白血球の中にいるウイルスの感染リスクを下げる |
| 輸血後GVHD | 白血球除去だけでは防ぎきれないため、放射線照射で残ったリンパ球を不活化する |
導入の歴史
- 2004年(平成16年)10月:成分献血由来の血小板製剤で保存前白血球除去を開始。
- 2007年(平成19年)1月16日採血分から:全血献血由来の製剤(赤血球製剤、新鮮凍結血漿など)にも拡大。
それ以前は、医療機関でベッドサイドの白血球除去フィルターを使って輸血時に除去する方法が主でしたが、保存前に除去するほうが、保存中に白血球が壊れて放出する物質も減らせるため、より効果的です。現在供給されている輸血用血液製剤は、白血球除去済みが標準です。
放射線照射との役割分担
白血球除去フィルターは白血球の数を大幅に減らしますが、ゼロにはできません。ごくわずかに残ったリンパ球が患者さんの体内で増殖すると、致死的な輸血後GVHDを起こす可能性があります。そこで赤血球製剤と血小板製剤には放射線(15Gy以上50Gy以下)を照射し、残ったリンパ球の増殖能力を止めます。白血球除去が「数を減らす」対策、放射線照射が「働きを止める」対策で、両方を行うことで輸血後GVHDは1998年以降ゼロ、発熱反応も大幅に減りました(放射線照射と輸血後GVHD)。
どうやって除去するのか
血液センターの製剤工程で、血液を白血球除去フィルターに通します。フィルターの繊維に白血球が吸着され、赤血球や血小板、血漿は通過します。全血献血の血液は遠心分離の前後にフィルターを通し、成分献血の血小板は採血装置の段階で白血球の混入を抑えたうえでフィルター処理されます。除去された白血球は製剤には戻りません(血が製剤になるまで)。
献血者側の体験は変わらない
白血球除去は採血後に血液センターの製造工程で行われるため、献血する側の流れや負担は変わりません。献血者の白血球が減るわけでもありません(体内の白血球はそのまま)。あなたの献血血液は、見えないところでこうした「磨き上げ」を経て患者さんに届いています。献血後の検査結果に表示される白血球数(WBC)は、あなた自身の血液の値で、製剤の白血球除去とは関係ありません(検査結果の見方)。
輸血の安全対策の全体像
白血球除去は、器具の使い捨て・初流血除去・NAT検査・放射線照射・貯留保管・検体保管・遡及調査と並ぶ安全対策の一つです。目的の異なる対策が幾重にも重なって、輸血の安全を支えています(献血血液の安全を守る仕組み・血液製剤の種類)。
よくある質問
Q. 血液製剤の「LR」とは何の略ですか?
A. Leukocytes Reduced(白血球除去済み)の略です。保存前に白血球を除去し、発熱反応など白血球に起因する副作用を減らすことを目的としています。
Q. 白血球除去はいつから行われていますか?
A. 成分献血由来の血小板製剤は2004年10月から、全血献血由来の製剤は2007年1月16日採血分から保存前白血球除去が行われています。
Q. 白血球を除くと何が防げますか?
A. 非溶血性発熱反応、HLA抗体の産生による血小板輸血不応、白血球に潜むウイルス(サイトメガロウイルスなど)の感染リスクを減らせます。
Q. 白血球除去と放射線照射は何が違いますか?
A. 白血球除去は白血球の「数」を減らす対策、放射線照射は残ったリンパ球の「働き」を止めて輸血後GVHDを防ぐ対策です。両方を行っています。
Q. 献血者の白血球が減るのですか?
A. 減りません。白血球除去は採血後に血液センターの製造工程で製剤に対して行うもので、献血者の体内の白血球はそのままです。
Q. LRが付いていない製剤はありますか?
A. 現在日本で供給されている輸血用血液製剤は白血球除去済みが標準で、主要な製剤にはLRの表示があります。
次にすること
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