献血はなぜ無償?お金がもらえない3つの理由
公開 2026/08/22・更新 2026/10/10
- 理由1:血液法第16条が有料採血と血液提供のあっせんを禁止。違反は3年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金
- 理由2:売血時代(1950〜60年代)に「黄色い血」と輸血後肝炎が多発。1964年に献血への転換を閣議決定、1990年に有料採血完全廃止
- 理由3:WHOによれば自発的無償献血者は血液由来感染症の有病率が最も低い最も安全なドナー層。報酬は感染リスクを隠す動機になる
- 記念品・ポイント・処遇品は換金性のない感謝のしるしで、労働の対価とは区別
- 輸血が有料なのは血液製剤の検査・製剤化・供給のコスト(薬価)で、献血者に対価を払うためではない
理由1:法律で禁止されている
血液法(安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律)第16条は「何人も、有料で、人体から採血し、又は人の血液の提供のあつせんをしてはならない」と定めており、違反には罰則(3年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金)まであります。日本で血液を売買することは犯罪です。日本赤十字社が献血者にお金を払えば法律違反になり、献血者が「血を買ってほしい」と持ちかけることもできません(血液法の解説)。
理由2:「売血」の失敗を経験したから
日本はかつて血液を買っていた国です。1950年に民間商業血液銀行が設立され、輸血用血液は売血で供給されていました。生活のために売血を繰り返す人の血液は赤血球が少なく黄色く見え(「黄色い血」問題)、肝炎ウイルスの検査がなかった時代には輸血後肝炎が多発しました。1964年のライシャワー事件(駐日米大使が刺され輸血後に肝炎に感染)を機に献血への転換が閣議決定され、1974年に輸血用血液の100%献血化、1990年に有料採血が完全に廃止されました。無償の原則は、売血が患者さんにも売る人にも害を与えたという失敗から学んだ制度設計です(日本の献血の歴史)。
理由3:無償の血液が「一番安全」だから
WHOによると、自発的無償献血者は血液由来感染症の有病率が最も低い、最も安全なドナー層です。報酬が目的になると、体調や感染リスクを隠してでも献血しようとする動機が働き、輸血を受ける患者さんが危険にさらされます。問診はウインドウ期(検査で見つけられない感染初期)を埋める最後の砦で、正直な申告は「見返りがない」からこそ期待できます。世界保健総会の決議(WHA63.12)も、すべての加盟国に自発的無償献血にもとづく血液事業の構築を求めています。無償は「きれいごと」ではなく、安全のための仕組みです(世界の献血事情・問診で正直に答える理由)。
じゃあ記念品やポイントはいいの?
| 提供されるもの | 位置づけ |
|---|---|
| 会場の飲み物・お菓子 | 水分補給と気分不良予防を兼ねた処遇。対価ではない |
| 記念品・処遇品(日用品、コラボグッズ) | 換金性のない感謝のしるし。数量・期間限定 |
| ラブラッドのポイント(20ポイントで記念品) | 記念品交換専用。現金・電子マネーには交換不可 |
| 回数の表彰(記念品・有功章・感謝状) | 長年の協力への顕彰 |
| 現金・商品券・電子マネー・交通費 | 提供されない。提供すれば有料採血に当たりうる |
飲み物・お菓子・記念品・ポイントは、換金性のない「感謝のしるし」として提供されているもので、労働の対価としての報酬とは区別されています。国際的にも、現金報酬を伴わない範囲の記念品は無償献血の枠内とされています。血液センターは、記念品が「対価」と受け取られないよう、金額や換金性に配慮しています(献血の記念品・ポイント)。
「献血は無償なのに、輸血は有料」の疑問
献血者は無償で血液を提供しますが、患者さんが輸血を受けるときには血液製剤の代金(薬価)がかかり、医療保険で支払われます。「タダでもらった血を売っている」と感じる人もいますが、薬価は献血者への対価ではなく、採血・輸送・検査(NATなど)・製剤化(遠心分離、白血球除去、放射線照射)・温度管理した保管と24時間供給・検体の11年保管・遡及調査といった、血液を安全に患者さんに届けるためのコストです。日本赤十字社の血液事業は営利を目的とせず、この費用をまかなうために薬価が設定されています。献血者の善意が「無料の原料」として使われているわけではなく、安全に届けるための仕組みに投資されています(血が製剤になるまで・安全を守る多層防御)。
海外にはお金がもらえる国もあるのでは?
あります。WHOによると59か国では血液供給の50%超を家族・代替ドナーや有償ドナーに依存しています。また、輸血用血液は無償でも、血漿分画製剤の原料となる血漿については有償採取を認めている国(米国など)があり、日本が輸入する免疫グロブリンなどの原料はこうした血漿に由来するものが少なくありません。日本が血漿分画製剤の国内自給を進めるのは、この構造への依存を減らすためでもあります。日本は輸血用血液を100%無償献血でまかなっており、WHOが推進する方向にある国です(血液製剤の国内自給)。
無償だからこそ守られているもの
- 献血者の健康:報酬のために無理をして献血する人がいない。採血基準と間隔は献血者の保護のためのもの。万一の健康被害には献血者健康被害救済制度がある。
- 患者さんの安全:問診への正直な回答が期待でき、ウインドウ期のリスクを最小化できる。
- 血液事業への信頼:営利ではなく善意で成り立つ仕組みが、献血者・患者・医療機関の信頼を支えている。
「お金がもらえない」のではなく、「お金で買わないことで安全と信頼を得ている」のが日本の献血です(献血のメリット・献血のデメリット)。
よくある質問
Q. 献血でお金がもらえないのはなぜですか?
A. 血液法が有料採血を禁じているためです。背景には、売血時代に輸血後肝炎が多発した教訓と、無償献血者の血液が最も安全というWHOの知見があります。
Q. 海外にはお金がもらえる国もあるのでは?
A. 有償の血漿採取などが制度上残る国はあります。ただしWHOは自発的無償献血を推進しており、日本は輸血用血液を100%無償献血でまかなっています。
Q. 記念品やポイントは「有料」ではないのですか?
A. 換金性のない感謝のしるしとして、労働の対価とは区別されています。現金や商品券、電子マネーは提供されません。
Q. 献血は無償なのに、なぜ輸血は有料なのですか?
A. 血液製剤の薬価は献血者への対価ではなく、検査・製剤化・温度管理・24時間供給・検体保管など、血液を安全に患者さんに届けるためのコストです。日本赤十字社の血液事業は営利を目的としていません。
Q. 交通費くらいは出ないのですか?
A. 出ません。交通費の支給も対価と見なされうるため提供されていません。会場での飲み物や記念品が感謝のしるしとして用意されています。
Q. 無償だと献血者が集まらないのでは?
A. 日本では年間延べ約499万人(令和7年)が無償で献血し、輸血用血液を100%自給しています。無償だからこそ問診への正直な回答と血液事業への信頼が保たれています。
次にすること
関連ガイド
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- 日本の献血の歴史|売血・黄色い血・ライシャワー事件・献血の日・預血・100%献血化・血液法まで年表で
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