血液法とは?献血を支える法律の4つの基本理念をやさしく解説
公開 2026/08/22・更新 2026/09/05
- 正式名称は「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」(昭和31年法律第160号)。1956年の採供法を2002年に全面改正し2003年施行
- 4つの基本理念(第3条):安全性の向上、国内自給と安定供給、適正な使用、公正の確保と透明性の向上
- 第16条:何人も有料で採血・血液提供のあっせんをしてはならない。違反は3年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(第33条)
- 国・地方公共団体・採血事業者・医療関係者・国民それぞれの責務を規定。国民には献血への協力の努力が求められる
- 国は基本方針と毎年度の献血推進計画・需給計画を策定。採血は許可制で、採血基準は献血者の保護のため
血液法とは
正式名称は「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」(昭和31年法律第160号)。1956年に売血時代の規制として作られた「採血及び供血あっせん業取締法」(採供法)を、2002年に全面改正したもので、2003年に施行されました。改正の背景には、1980年代の薬害エイズ問題(輸入非加熱血液製剤によるHIV感染)の教訓と、血液製剤の安全性・国内自給を法律の目的として明確にする必要がありました。第1条は、血液製剤の安全性の向上・安定供給の確保・適正な使用の推進と、献血者等の保護を図ることを目的に掲げています(日本の献血の歴史)。
4つの基本理念(第3条)
| 理念 | 条文の趣旨 | 現場での形 |
|---|---|---|
| 安全性の向上 | 血液製剤は、原料である血液の特性にかんがみ、安全性の向上に常に配慮して製造・供給・使用されなければならない | 問診、NAT検査、放射線照射、白血球除去、遡及調査などの多層防御 |
| 国内自給と安定供給 | 国内で使用される血液製剤は、原則として国内の献血により得られた血液を原料とすること(国内自給)を基本とし、安定的に供給されるようにする | 輸血用は1974年から100%自給。血漿分画製剤の自給率向上が課題 |
| 適正な使用 | 献血により得られる貴重なものであることから、適正に使用されなければならない | 医療機関の輸血療法委員会、輸血の指針、使用量の適正化 |
| 公正の確保と透明性の向上 | 国・地方公共団体などは、施策の策定・実施にあたり公正の確保と透明性の向上に努める | 血液事業部会の公開、需給計画・自給率の公表 |
「売血の禁止」も法律で明記されている
第16条は「何人も、有料で、人体から採血し、又は人の血液の提供のあつせんをしてはならない」と定め、違反には3年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金(併科あり)という罰則があります(第33条)。日本の献血が無償なのは、単なる慣習ではなく法律上の要請です。例外として、治療目的の自己血採取や、研究・検査のための採血など法律が認める場合はこの限りではありませんが、「血を売って金を得る」「血液の提供を金銭で仲介する」行為は犯罪です。飲み物や記念品などの処遇品は、換金性のない感謝のしるしとして、対価には当たらないと整理されています(献血はなぜ無償か・記念品の位置づけ)。
それぞれの責務
- 国:基本理念にのっとり、血液製剤の安全性向上・安定供給・適正使用のための施策を策定・実施する。基本方針と毎年度の献血推進計画・需給計画を定める。
- 地方公共団体:地域の実情に応じて献血の推進や普及啓発に努める。都道府県は献血推進計画を策定する。
- 採血事業者(日本赤十字社):献血の受入れを推進し、安全な血液製剤を製造・供給する。採血には厚生労働大臣の許可が必要(許可制)。
- 血液製剤の製造販売業者:安全性の向上と安定供給に努める。
- 医療関係者:血液製剤の適正な使用に努め、安全性に関する情報を収集・提供する。
- 国民:献血の意義への理解を深め、献血に協力するよう努める(努力義務)。
献血者に関わる条文
- 採血基準:採血によって献血者の健康が損なわれないよう、年齢・体重・血色素量・採血量・間隔などの基準を国が定める根拠。「献血にご協力いただける方の健康を保護するために、国が定めたもの」とはこの法律に基づく基準のこと(採血基準の一覧)。
- 献血者の保護:採血事業者は献血者の健康の保護に配慮し、健康被害が生じた場合の救済(献血者健康被害救済制度)を行う。
- 問診と検査:安全な血液製剤のために必要な問診・検査を行う根拠。問診票の返却・廃棄ができないのも、記録の保全を求める法令の規定による(問診票が返却できない理由)。
- 記録の保存:血液製剤の使用記録を医療機関が長期保存し、遡及調査に備える(遡及調査)。
法律にもとづいて毎年「計画」が作られる
血液法にもとづき、国は基本方針(おおむね5年ごとに見直し)と、毎年度の献血推進計画(どれだけの献血を確保するか)・需給計画(血液製剤をどれだけ製造・供給するか)を策定・公表しています。都道府県も献血推進計画を作ります。「今年どれだけの血液が必要で、どう集めるか」が毎年国レベルで計画されている——献血は、それほど重要な社会インフラだということです(国の献血推進計画)。
血液法が生まれるまで
1956年の採供法は、売血が横行した時代に採血業者を規制する法律でした。1964年の閣議決定で献血への転換が始まり、1974年に100%献血化を達成した後も、法律の名前は「取締法」のままでした。1980年代の薬害エイズ問題で、輸入血液製剤の安全性と国内自給の重要性が痛感され、2002年の全面改正で「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」に生まれ変わりました。取り締まりの法律から、安全と安定供給を国の責任として定める法律への転換です(国内自給の現状・世界の無償献血)。
よくある質問
Q. 血液法とは何ですか?
A. 「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」の通称です。血液製剤の安全性向上・国内自給と安定供給・適正使用・公正透明の4つを基本理念とし、2003年に施行されました。
Q. 献血にお金を払うことは法律で禁止されていますか?
A. はい。血液法第16条が有料での採血・血液提供のあっせんを禁じており、違反には3年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金の罰則があります。
Q. 記念品や飲み物は「有料」に当たりませんか?
A. 当たりません。換金性のない感謝のしるし(処遇品)として、労働の対価とは区別されています。現金や商品券は提供されません。
Q. 国民に献血の義務はありますか?
A. 義務ではなく努力義務です。血液法は国民に献血の意義への理解と協力に努めることを求めていますが、罰則はありません。
Q. 採血基準は誰が決めていますか?
A. 血液法にもとづいて国(厚生労働省)が定めています。献血者の健康を保護するための基準で、日本赤十字社はこれに従って採血します。
Q. なぜ2002年に法律が改正されたのですか?
A. 薬害エイズ問題の教訓から、血液製剤の安全性と国内自給を国の責任として法律に明記する必要があったためです。売血時代の取締法から、安全と安定供給を定める法律に生まれ変わりました。
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