日本の献血の歴史|売血・黄色い血・ライシャワー事件から現在まで

公開 2026/08/22・更新 2026/09/05

いま当たり前の「無償の献血」は、実はわずか60年ほど前に始まった仕組みです。戦後の日本では血液は売り買いされ、生活のために売血を繰り返す人の「黄色い血」が輸血後肝炎を多発させました。1964年のライシャワー事件を機に政府が献血体制の確立を閣議決定(8月21日=献血の日)。1974年に輸血用血液の100%献血化を達成し、2003年の血液法で国内自給が法律の理念になりました。血を「売買」していた時代からの歴史をたどります。
⚡ 30秒でわかる要点
日本の献血の歴史(売血から献血100%へ)1950日本初の民間商業血液銀行。輸血用血液は「売血」で供給1962「黄色い血」追放運動が始まる1964ライシャワー事件 → 8/21 献血推進を閣議決定(献血の日)1969売血による輸血用保存血液の製造を中止(預血制度へ)1974輸血用血液の献血100%体制を達成・預血廃止1990有料採血の完全廃止2003血液法 施行(国内自給・安全性・適正使用を明記)
血を「売買」していた時代から、閣議決定を経てわずか10年で献血100%へ。出典は厚生労働省「血液事業のあゆみ」年表。
📑 目次
  1. 年表
  2. 戦後:血液は「売り買い」されていた
  3. 「黄色い血」問題(1962年〜)
  4. 1964年:ライシャワー事件と閣議決定
  5. 預血から、献血100%へ
  6. 2003年:血液法の施行
  7. 安全対策の進歩(1990年代〜)
  8. 歴史を知ると、献血の見え方が変わる
  9. よくある質問

年表

年出来事
1919年日本で初めての輸血が行われたとされる(大正期)
1950年日本初の民間商業血液銀行が設立。輸血用血液は売血(自分の血液を有償で売る)で供給される
1952年日本赤十字社が血液銀行を開設
1956年「採血及び供血あっせん業取締法」(採供法)施行。売血の枠組みは続く
1962年「黄色い血」追放運動が始まり、学生を中心に全国へ
1964年3月ライシャワー駐日アメリカ大使が刺され、輸血後に肝炎に感染(ライシャワー事件)
1964年8月21日政府が「輸血用血液を献血により確保する体制を確立する」ことを閣議決定。献血の日の由来
1969年売血による輸血用保存血液の製造が中止。預血制度へ移行
1974年輸血用血液のすべてを献血で確保する体制が確立。預血制度も廃止
1986年成分献血が本格導入され、400mL献血も開始(1986年に400mL採血と成分採血が認可)
1990年有料採血が完全に廃止
1998年放射線照射血液製剤の供給開始。輸血後GVHDが以後ゼロに
1999年NAT(核酸増幅検査)を世界に先駆けて導入
2003年採供法を全面改正した「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」(血液法)施行
2004〜2007年保存前白血球除去を導入。2006〜2007年に初流血除去
2014年NATを1人分ずつ検査する個別NATに移行
2023年赤血球製剤の有効期間を21日から28日に延長。体重測定が必須に
2025年血小板製剤の有効期間を4日から6日に延長(細菌スクリーニング導入)
2026年1月献血カード・献血手帳を廃止し、受付をラブラッドアプリに統一

1986年の成分献血・400mL献血の導入年は一般に知られる経緯で、詳細は日本赤十字社の血液事業の歴史をご確認ください。

戦後:血液は「売り買い」されていた

1950年に日本初の民間商業血液銀行が設立され、輸血用血液は売血(自分の血液を有償で売ること)で供給されていました。1952年には日本赤十字社も血液銀行を開設。1956年に「採血及び供血あっせん業取締法」が施行されますが、血液を金銭で集める構図は続きました。当時、輸血用血液の大半は民間血液銀行の売血によるもので、血液センターの前に「血を売る人」が列を作る光景がありました。

「黄色い血」問題(1962年〜)

生活のために売血を繰り返す人の血液は、赤血球が少なく血漿の黄色が目立つことから「黄色い血」と呼ばれました。頻回の売血で貧血になった人の血液は輸血の効果が乏しいうえ、肝炎ウイルスの検査がなかった時代には輸血後肝炎が多発し、品質・倫理の両面で社会問題になりました。1962年には「黄色い血」追放運動が始まり、学生を中心に全国へ広がります。売血に頼る仕組みが、輸血を受ける患者さんにも、血を売る人にも害を与えていたのです。

1964年:ライシャワー事件と閣議決定

1964年3月、ライシャワー駐日アメリカ大使が暴漢に刺され、輸血を受けた後に肝炎に感染する事件が起きました(ライシャワー事件)。売血による血液の危険性が国内外に知れ渡り、これが決定打となって、1964年8月21日、政府は「輸血用血液を献血により確保する体制を確立する」ことを閣議決定します。この日が現在の「献血の日」(8月21日)の由来です。1963年時点でわずか2%程度だった献血由来の輸血用血液は、ここから急速に増えていきます。

預血から、献血100%へ

1969年に売血による輸血用保存血液の製造が中止され、献血した量を「預けておき、自分や家族が必要になったとき優先的に使える」預血(よけつ)制度へ移行。そして1974年(昭和49年)、輸血用血液のすべてを献血で確保する体制が確立し、預血制度も廃止されました。閣議決定からわずか10年での達成です。1990年には有料採血が完全に廃止されました。以降、日本国内で輸血される血液はすべて無償の献血でまかなわれています(国内自給の現状)。

2003年:血液法の施行

薬害エイズ問題(1980年代、輸入非加熱製剤によるHIV感染)などの教訓もふまえ、2003年に採供法が「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」(血液法)に改められ、安全性の向上と安定供給の確保、国内自給の推進、適正使用、公正・透明が法律の目的として明記されました。売血の禁止も法律に明記され、違反には罰則があります。ただし血漿分画製剤の一部は今も輸入に依存しており、「完全自給」への歩みは現在も続いています(血液法とは・献血はなぜ無償か)。

安全対策の進歩(1990年代〜)

献血100%化の後も、輸血の安全性は技術とともに高まってきました。1998年の放射線照射で輸血後GVHDがゼロに、1999年のNAT導入と2014年の個別NATでウイルス感染の検出感度が飛躍的に向上、2004〜2007年の保存前白血球除去と初流血除去で副作用と細菌汚染が減少。有効期間も検査技術に支えられて延びています(放射線照射・NAT検査・血液の有効期間)。

歴史を知ると、献血の見え方が変わる

無償のボランティアで血液がまかなわれる仕組みは、先人が売血の悲劇から学んで作り上げたものです。学生たちの「黄色い血」追放運動が世論を動かし、政府の決定と日本赤十字社の体制づくりが10年で100%献血化を実現しました。少子高齢化で献血者が減る今、次の60年へつなぐ一歩として、近くの献血会場を探してみてください(献血者数の統計・世界の献血事情)。

🩸 近くで献血できる場所を探す

よくある質問

Q. 「献血の日」はいつですか?
A. 8月21日です。1964年8月21日に政府が「輸血用血液を献血により確保する体制を確立する」ことを閣議決定したことに由来します。

Q. ライシャワー事件とは何ですか?
A. 1964年3月、ライシャワー駐日アメリカ大使が刺され、輸血を受けた後に肝炎に感染した事件です。売血による血液の危険性が広く知られるきっかけとなり、献血体制への転換を決定づけました。

Q. 日本で売血はいつまで行われていましたか?
A. 輸血用の売血由来保存血液の製造は1969年に中止され、1974年に輸血用血液の100%献血化を達成。1990年に有料採血が完全廃止されました。

Q. 「黄色い血」とは何ですか?
A. 生活のために売血を繰り返す人の血液が、赤血球が少なく血漿の黄色が目立つことから呼ばれた言葉です。輸血後肝炎の多発とともに社会問題になり、1962年から追放運動が広がりました。

Q. 預血とは何ですか?
A. 献血した量を預けておき、自分や家族が必要になったとき優先的に使える制度です。1969年の売血廃止後に導入され、1974年の100%献血化とともに廃止されました。

Q. 血液法はいつできましたか?
A. 1956年の採供法を全面改正し、2003年に施行されました。安全性の向上・国内自給と安定供給・適正使用・公正透明を基本理念とし、売血の禁止も明記しています。

📚 この記事の主な根拠(内容確認日 2026/08/22)
※本記事は日本赤十字社・厚生労働省などの公開情報にもとづいています(ページ生成 10/19)。採血基準や延期期間は改定されることがあり、献血の最終的な可否は当日の会場で健診医が判断します。最新情報は日本赤十字社・ラブラッドでご確認ください。

次にすること

今週末の献血バス・今後7日間の献血バス

関連ガイド

同じカテゴリの記事(歴史・制度・世界)

災害時の献血|「直後に殺到」より「継続」が支援になる理由人工血液はまだ作れない?研究の現在地と献血が必要な理由国の「献血推進計画」とは?2026年度の確保目標は224万リットル

都道府県から献血バスの日程・献血ルームを見る

北海道青森県岩手県宮城県秋田県山形県福島県茨城県栃木県群馬県埼玉県千葉県東京都神奈川県山梨県長野県新潟県富山県石川県福井県岐阜県静岡県愛知県三重県滋賀県京都府大阪府兵庫県奈良県和歌山県鳥取県島根県岡山県広島県山口県徳島県香川県愛媛県高知県福岡県佐賀県長崎県熊本県大分県宮崎県鹿児島県沖縄県