血液型が同じでも輸血前に検査する理由|不規則抗体とクロスマッチ
公開 2026/08/22・更新 2026/09/05
- 血液型はABO・RhD以外にも多数(Rh系のC/c/E/e、Kidd、Duffy、Diego、MNSなど)。国際的に40以上の血液型システムが知られる
- 不規則抗体:輸血・妊娠・移植で作られる、ABO以外の血液型に対する抗体(日本赤十字社)。持っている人は同じABO型でも合わない血液がある
- 輸血前の適合試験:ABO・RhD・不規則抗体スクリーニング+交差適合試験(主試験は必須)(厚労省の指針)
- 緊急時:血液型判定前はO型赤血球、AB型血漿を使うことがある。判定後は同型に
- 不規則抗体保有者・まれな血液型の患者には、登録献血者・凍結血・自己血輸血で対応
「不規則抗体」とは
血液型にはABO・Rh以外にも多くの型があります。赤血球の表面には数百種類の抗原があり、国際輸血学会はRh系(C・c・E・e)、Kidd、Duffy、Diego、MNS、Lewisなど40以上の血液型システムを認定しています。日本赤十字社によると、不規則抗体は、輸血や妊娠、移植によって産生される抗体で、ABO型以外の血液型に対する抗体のこと。ABO型の抗体(A型の人が持つ抗B抗体など)は誰もが生まれつき持つ「規則的な」抗体ですが、それ以外の抗体は他人の赤血球に触れる経験(輸血、妊娠で胎児の血液に触れる、移植)をきっかけに作られるため「不規則」と呼ばれます。過去に輸血や妊娠を経験した人の血液には、この「見えない相性」が潜んでいることがあります。
だから輸血前に「クロスマッチ」をする
厚生労働省の「輸血療法の実施に関する指針」は、輸血の適合試験としてABO血液型・RhD抗原・不規則抗体スクリーニングの検査に加えて、輸血前に交差適合試験(クロスマッチ)を行うことを定めています。
| 検査 | 内容 |
|---|---|
| ABO血液型 | おもて検査(赤血球の抗原)とうら検査(血清の抗体)の両方で判定 |
| RhD抗原 | Rhプラスかマイナスか |
| 不規則抗体スクリーニング | 患者さんの血漿に、ABO以外の血液型に対する抗体がないかを調べる |
| 交差適合試験(主試験) | 患者さんの血漿と献血者(供血者)の赤血球を試験管内で反応させ、凝集や溶血が起きないことを確認。ABO同型の血液を用いたうえで必ず実施 |
指針は、交差適合試験には患者とABO血液型が同型の血液を用いたうえで、患者の血漿と供血者の赤血球を反応させる主試験を必ず実施しなければならないとしています。つまり「同じ血液型」はスタートラインで、最終確認は患者さんと製剤の組み合わせごとに行われるのです。不規則抗体が見つかった場合は、その抗原を持たない血液を選んで輸血します。
緊急輸血のときは
大量出血で血液型を判定する時間もないときは、赤血球に対する抗体を持たないO型の赤血球製剤や、どの型にも抗体を含まないAB型の血漿を「異型適合血」として使うことがあります。「O型は万能」と言われるのはこのためですが、これは緊急時の例外で、血液型が判明した後は同型の血液に切り替えます。指針でも、緊急時の異型適合血輸血は限られた条件で認められ、可能な限り早く適合試験を行うこととされています(血液型と献血・すべての型が必要な理由)。
まれな血液型・不規則抗体保有者はさらに慎重に
不規則抗体を持つ患者さんや、頻度1%以下のまれな血液型(稀血)の患者さんは、適合する血液を見つけること自体が難しくなります。そのため、次のような仕組みがあります。
- 登録献血者制度:まれな血液型と判定された献血者を登録し、必要時に協力を依頼する(まれな血液型とは)。
- 凍結保存:まれな血液型の赤血球を−80℃以下で凍結し、最長10年保存する。
- 自己血輸血:予定手術では、患者さん自身の血液をあらかじめ貯めて使う(自己血輸血とは)。
- 血液センターの検査部門:医療機関で判定が難しい不規則抗体の同定を血液センターが引き受け、適合血を探す。
血小板にも「型」がある
赤血球の血液型だけでなく、血小板にもHLA(白血球・血小板の型)とHPA(血小板固有の型)があります。血小板輸血を繰り返す患者さんにHLA抗体ができると通常の血小板製剤が効かなくなり、HLA適合血小板が必要になります(HLA適合血小板献血・HPAとは)。
献血者にとっての意味
あなたの献血した血液も、患者さんに届く前にこうした検査で「その人に合うか」を確かめられています。血液センターでは献血血液のABO・RhDに加え、不規則抗体のスクリーニングも行い、抗体を持つ献血者の血漿は輸血用に使わないなどの対応がとられます。献血後の検査で自分の詳しい血液型(Rh系の型など)がわかることもあり、まれな型なら登録の案内が届きます。血液型のマッチングは想像よりずっと精密——それを支えるのは、多様な血液型の献血者が常にいることです(血液型はいつわかる?・血が製剤になるまで)。
よくある質問
Q. 血液型が同じなら誰にでも輸血できますか?
A. できるとは限りません。輸血や妊娠などで作られる「不規則抗体」があるため、輸血前には患者と血液の組み合わせごとに交差適合試験(クロスマッチ)が行われます。
Q. 不規則抗体はどうやってできるのですか?
A. 輸血や妊娠、移植によって産生されると日本赤十字社が説明しています。他人の赤血球に触れる経験がきっかけで、過去の輸血歴・妊娠歴のある方の血液に見られることがあります。
Q. ABO以外にどんな血液型がありますか?
A. Rh系(C・c・E・e)、Kidd、Duffy、Diego、MNS、Lewisなど、国際的に40以上の血液型システムが知られています。不規則抗体はこれらに対する抗体です。
Q. 緊急時にO型の血を使うのはなぜですか?
A. O型の赤血球はA・B抗原を持たず、どの型の患者さんの抗体とも反応しにくいためです。血液型判定前の緊急輸血で使われ、判定後は同型に切り替えます。
Q. 不規則抗体があると輸血できないのですか?
A. できます。その抗体が反応する抗原を持たない血液を選んで輸血します。まれな抗体の場合は血液センターが適合血を探し、登録献血者や凍結血で対応します。
Q. 献血者の血液も不規則抗体を調べますか?
A. 調べます。献血血液のABO・RhDに加え不規則抗体のスクリーニングを行い、抗体を持つ献血者の血漿は輸血用に使わないなどの対応がとられます。
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